日中対照言語学会11月定例月例会報告
日中対照言語学会11月定例月例会(11月19日[土]18:00~20:30)は、大東文化会館K302で開催された。研究発表者は2名、白石祐一(大東文化大学非常勤講師)、テーマは「主語が人を表す名詞述語文について」、高橋弥守彦(大東文化大学)テーマは「日中対照関係から見る“进+空间词”について」、司会は石井宏明(東海大学)が担当した。持ち時間は各1時間、このうち発表時間は約45分、質疑応答は約15分間行われた。会場からは
盛んな質問があり、予定を約30分間オーバーした。
(1)主語が人を表す名詞述語文(白石裕一 中央大学兼任講師)
中国語の名詞述語文は“是”、“有”、“V着”、“V”といった動詞が含意(“隠含”)されている。そして、このような含意されている動詞に基づいて、名詞述語文は“是”含意型名詞述語文、“有”含意型名詞述語文、“V着”含意型名詞述語文、“V”含意型名詞述語文に分類することができる。また意味論的に、“是”含意型述語文は前項と後項を結びつけていて、“有”含意型名詞述語文は「存在」「所有」を表し、“V着”含意型名詞述語文は「持続」を表し、“V”含意型名詞述語文は「未然」や「経常的」な意味を表している。
白石氏は、名詞述語文をこのように分類することによって、人の属性を表す複文や文群に現れる名詞述語文が“是”含意型名詞述語文であり、人の状態を表す複文や文群に現れる名詞述語文が“有”含意型名詞述語文であると説明した。
この発表に対し、会場から主として3つの質問があった。一つは、名詞述語文を動詞の「省略」というと、動詞省略文になってしまう。名詞がなぜ述語になるのかを考える必要がある。二つ目は、“我是二十岁。”は談話の冒頭にいきなり現れることはないとの指摘があった。三つ目は二つ目と同様の指摘と、“是”の意味の多義性の指摘があった。
(2)日中対照関係から見る“进+空间词”について(高橋弥守彦 大東文化大学)
日本語の「空間的な進入のむすびつき」は一般に「ニ格の空間詞+入る」で表される。これに対応する中国語の一つとして、“进+空间词”が挙げられる。しかし、両者は対応関係にない場合もある。たとえば、“进+空间词”が同一空間であれば、「空間的な進入のむすびつき」を表し、異空間や2点の場所が示されていれば、「空間的な着点のむすびつき」や「空間的な移りのむすびつき」を表す。各むすびつきの中で、動詞と名詞とに意味変化がおきる場合もある。
“进+空间词”を用いて4構造“进屋”“走进屋”“进屋来”“走进屋来”が作れる。連語論の観点からみれば、このうちの“进屋”「位置移動の動詞+空間詞」が基本であり、それに動態移動の動詞や趨向移動の動詞が加わり、他の3類の構造が作られる。趨向移動の動詞“来/去”はいずれも視点のある移動を表し、そのあとに空間詞をとれるか否かにより、転移義(“他跑进餐厅去厕所了。”[彼は走ってレストランへ入りトイレへ行った。])と趨向義(“他跑进操场去了。[彼は走ってグラウンドへ入って行った。]”)とに分かれる。転移義であれば、空間詞を伴い「空間的な移りのむすびつき」“去厕所”を作る。このように分析をすれば、空間詞は位置移動の動詞“进”と連語を作ることが明白である。